アトピー性皮膚炎の治療で、こんなお悩みはありませんか?
- 「毎日ステロイドや保湿剤を塗っているのに、全然よくならない」
- 「見た目が治るとすぐに赤みがぶり返して、薬のやめ時がわからない」
- 「薬と保湿剤を混ぜて塗るのが正しいのか、疑問に思っている」
ステロイド・保湿剤の「効果が激変する」3つの鉄則
もしあなたが今、「薬は一緒なのに、なぜか治りが悪い」と感じているなら、それは薬の選び方ではなく、「塗り方」と「薬との付き合い方」が原因かもしれません。
実は、塗り方を変えるだけで症状が劇的に安定するケースが非常に多くあります。私自身、重症だった息子の治療経験と、アトピー性皮膚炎に詳しいクリニックでの勤務経験から、この事実を確信しています。
多くの方が「塗ったりやめたり」を繰り返し、結果的に「ステロイドを毎日使い続けるサイクル」から抜け出せずにいます。
この記事では、薬の効果を最大限に引き出し、炎症がぶり返さない「安定した肌の状態」を維持するために必須となる3つの鉄則を具体的にお伝えします。
あなたの肌の悩みを解決し、症状が落ち着いている日々を取り戻すために、ぜひ最後まで読み進めてください。
⚠️【最重要原則】治療方針は医師が絶対的に決定します
アトピー性皮膚炎の治療において、薬の種類や使用期間など、治療方針の最終的な判断は、必ずあなたの主治医が行います。
- 私を含め、医師ではない者が、あなたの症状を見て診断や治療の判断をすることは一切できません。
当記事でお伝えする塗り方や継続の考え方は、「私(看護師)が学んだクリニックで推奨され、効果を上げている『一つの実践的な方法』」です。この情報は絶対的な指導ではありません。
「こういう方法や指導をしている専門機関もあるんだな」という知識の選択肢として、ご自身の治療の参考にお読みいただければ幸いです。
🚨 主治医の指示と異なる場合の行動指針
もし、この記事で解説した内容が、現在あなたの主治医から受けている指示と異なる場合は、必ず主治医の指示を優先してください。
薬の種類や使用期間など、治療方針に関する最終判断は、必ずあなたの主治医の指示に従ってください。
鉄則1:薬と保湿剤は混ぜない「分離テクニック」
もしあなたが現在、主治医からステロイドと保湿剤を「混ぜた薬」を処方されているなら、その塗り方はこの記事で解説する「一つの方法」とは異なります。
なぜなら、薬と保湿剤は混ぜずに別々に塗る「分離テクニック」をおすすめしているからです。
1. なぜ「混ぜて塗る」のはNGなのか?
ステロイドと保湿剤を混ぜて塗ることは、薬の効果を弱めてしまう可能性があります。
例えるなら、「効き目を薄めたスープを飲んでいる」ような状態です。
- 効果の希釈(薄まる): ステロイド薬は、保湿剤によって成分が薄まってしまいます。その結果、本来期待される炎症を抑える効果が十分に発揮されなくなる可能性があります。
- 塗る量のあいまいさ: 混合薬だと、薬が必要な部分(炎症がひどい部分)と、保湿だけで十分な部分を細かく塗り分けることができなくなります。その結果、炎症が残った部分に薬が十分に届かず、症状のぶり返しの原因になりがちです。
2.「分離テクニック」の具体的な方法
一般的に「保湿剤が先」と指導されることが多いですが、私の学んだクリニックでは、ステロイドの力を患部にしっかり真っ先に届けるため、「ステロイドが先」という手順を推奨しています。
| 塗布の手順 | 目的 | ポイント |
| ステップ1:ステロイド薬 | 炎症部分に薬の力を集中させる | 患部(赤みや痒みがある部分)にだけ、適量を塗布します。 |
| ステップ2:非ステロイド軟膏や保湿剤 | 肌全体のバリア機能を整える | ステロイドが必要ではない、炎症のない肌の部分に使用する。 |
⚠️ 非ステロイド軟膏について(看護師の視点)
- 使用頻度が高い非ステロイド薬: コレクチム軟膏、プロトピック軟膏、モイゼルト軟膏などがあります。これらは医師が皮膚の状態に応じてステロイドから切り替えて処方する薬です。
- かゆみ悪化の注意点: 保湿剤としてよく処方されるヘパリン類似物質ローション(ヒルドイドなど)は、人によってはかゆみを悪化させることがあります。かゆみのある部位への使用は避けてください。
3.ステロイド薬の適量を知る「FTUの法則」
皮膚科などでは、薬の量を測る国際的な基準としてFTU(Finger-Tip Unit:フィンガーチップユニット)という単位を使います。
これは、薬の効果をしっかり出すために必要な、「少なすぎない量」の目安です。
FTUとは?

チューブから大人の人差し指の先(第一関節)まで薬を絞り出した量です。この1FTUの量で、大人の手のひら約2枚分(体表面積の約2%)に塗るのが適量です。
【鉄則1の最終確認】
- 薬の適量を把握する(多すぎず、少なすぎず)
- 炎症のある部分(患部)にのみ、まずステロイドを塗る
- その後、非ステロイド軟膏や保湿剤を塗る
🔑鉄則2:見た目が治っても塗り続ける「5日間の壁」
アトピー治療でステロイド薬を「塗ったりやめたり」のサイクルになってしまう最大の原因は、「見た目が治った」という自己判断で薬の塗布を中断してしまうことです。
1. なぜ「見た目が治っても」塗り続けなければならないのか?
多くの場合、ステロイド薬を塗ると2~3日で赤みや痒みといった表面的な炎症は落ち着き、肌が綺麗になったように見えます。
しかし、これは炎症細胞の活動が抑えられただけで、炎症の原因となる細胞や残骸は、皮膚の深い部分にまだ残っています。
例えるなら、「火事の煙(赤み)は消えたが、まだ火の種(炎症細胞)がくすぶっている」状態です。
この火の種を完全に消し去るために、見た目が治った後も、医師に指示された期間は塗り続ける必要があります。
2. 治療成功のための「最低継続日数」
推奨されるのは、炎症の原因を肌の奥から完全に消し去るための継続ルールです。
- 継続日数の目安: 炎症細胞が完全に消えるまでには時間がかかります。見た目と実際の完治には時間差があるため、当クリニックでは平均して5日間(3日間~7日間)は、指示された薬を塗り続けることが重要です。
- 症状がひどい場合: 炎症の程度によっては、7日〜14日間といった期間が必要になることもあります。
【警告】塗布を中断した場合のリスク 残存した炎症細胞が再び活性化し、高頻度で炎症が再燃します。これにより、薬を「塗ったりやめたり」という不安定な状態になり、いつまでも安定した肌を得られなくなります。
3.【最重要】ステロイド薬を塗ったりやめたりのサイクルから抜け出す
ステロイド薬単体であれ、混合薬であれ、「ずーっと使いっぱなしにしている方」は、治療がうまくいっていないサインとも言えます。
薬の効果を最大限に引き出す「5日間の集中治療」の原則を守り、以下のサイクルを確立することが、安定への道筋です。
- 正しい塗り方で集中して炎症をリセットする
- 炎症が治まったら非ステロイド薬へ切り替える(医師の指示)
- 炎症がぶり返すサイクルから抜け出す
鉄則3:薬の効果を半減させる「土台の誤解」
薬の塗り方や継続期間に注目してきましたが、実はその薬の効果を半減させてしまう「土台(日頃のスキンケア)」にも改善点があるかもしれません。
アトピー治療では、「薬」と「日々のスキンケア」は切り離せないセットです。
1. 薬を塗る前に「洗顔・保湿剤」を見直す
患者さんの中には日常的に使っている洗顔料などが合わず、肌のバリア機能が壊れている方もいます。
私が学んだクリニックでの指導: 初めて来院された患者さんには、薬の塗り方だけでなく、今使っている洗顔料や保湿剤の見直しをセットで指導しています。土台が間違っていると、どんなに良い薬を塗っても効果が半減するからです。
- 洗顔料の危険性: 肌に合わない洗浄力の強すぎる洗顔料は、皮膚のバリア機能を破壊し、炎症を悪化させます。この状態で薬を塗っても、炎症は治りにくくなります。
- 保湿剤の危険性: 炎症のある肌に刺激の強い成分や合わない保湿剤を塗ると、かえって痒みや赤みを悪化させ、薬が効きづらい状態が続きます。
2. 私自身の経験から学んだこと
私自身、息子がアトピーで苦しんでいたとき、薬の効果を上げられた最大の要因は、薬の塗り方を変えたことに加え、日々のスキンケアを徹底的に見直したことでした。
洗顔料を低刺激のものに切り替え、薬だけでなく食生活も気をつけるようにした結果、色素沈着もほぼ目立たない状態にまで改善しました。
薬の使用に加え、安定した肌を維持するには、正しい洗顔や保湿が不可欠です
3.【次の行動】薬の効果を最大限に引き出すために
薬の塗り方をマスターしたあなたは、次のステップとして「正しい肌の土台作り」に目を向けましょう。
- 正しい洗顔の原則: 皮膚のバリア機能を壊さない、低刺激で優しい洗い方を徹底する。
- 製品選びの原則: 刺激の少ない、アトピー肌に適した製品を選び、合わない製品はすぐに使用を中止する。
あなたが今、「効果がない」と感じている薬も、土台が整うことで効き始める可能性があります。
次のステップ: あなたの洗顔料は大丈夫?正しい洗顔方法と製品選びを知りたい方はこちら。
✨ まとめ:薬は同じでも「塗り方と土台」で未来は変えられる
この記事では、アトピー性皮膚炎の治療効果を劇的に高める「3つの鉄則」について、看護師の視点から解説しました。
1. 3つの鉄則の最終確認
- 【鉄則1:分離テクニック】:薬の効果を薄めず、患部に集中させるために、ステロイドと保湿剤は「混ぜずに」「順番に」塗りましょう。
- 【鉄則2:5日間継続ルール】:見た目が治っても、炎症の火種を完全に消すために平均5日間(3日~7日間)は薬を使い続ける習慣をつけましょう。
- 【鉄則3:土台の誤解】:薬の効果は、正しい洗顔と保湿という土台も含めた上で発揮されます。日々のスキンケアを見直しましょう。
2. 薬の「効果」は自分で変えられる
息子が以前「結局どこの病院行っても処方される薬は同じじゃない?」と話してきたことがありました。確かに処方される薬の種類自体は似ています。
「薬を塗ってもぶり返すサイクル」症状の場合、その原因は薬そのものではなく、「薬の届け方(塗り方)」と「肌の土台」を見直すことでぶり返すサイクルから抜け出せる場合があります。
あなたがこの記事で学んだ知識は、薬を最大限に活かし、炎症のサイクルを断ち切るための、最高の技術です。
3. 目指すのは「安定した日々」
長期間アトピーと付き合っている肌は、完璧な「ツルツルピカピカの肌」になることは難しいかもしれません。アトピーでなくても難しいです。
多くの患者さんが「痒くて痛い、浸出液が出る」などというつらい状態から、「症状が落ち着き、日常生活に支障のない安定した状態」になっていく姿をみました。あなたの肌が安定し、つらい症状と戦い続ける毎日ではなく穏やかな日々を送れるよう、心から願っています。
最後に:必ず主治医の指示に従ってください
この記事の内容は、数多くある治療方法の一つの方法です。薬の切り替えや使用期間などは、必ず主治医に相談し、医師の指示のもとで治療を進めてください。
医療機関では、「悪化してから受診」するのではなく、「悪化を防ぐための定期的な受診」が大切だと考えています。
正しい塗り方と、医師による継続的なチェック。
この二つがそろえば、安定への強い希望が持てるでしょう。
穏やかな日々を送れるよう、心から応援しています。

